某大学建築学科2年後期の都市計画の授業の重要キーワード集。
たまたまファイルみつけたのでアップしておきます。見つけられる人はいるんだろうか。
ちなみにネットの海や、図書館で僕自身が調べたものなので、間違いなどがあるかもしれないですが。


都市計画キーワード

木造密集市街地
木造密集市街地の多くは終戦直後、または高度経済成長期の前期に形成されたものが多い。明確な都市計画の指針がないままに形成されたものがほとんどである。道路幅の狭さや密集化による居住環境の悪化、防災上の問題点などが従来から指摘されてきた。また相続などによって敷地の細分化なども進んでいる。一方で様々なコミュニティが発生し、独自の文化が根付いている地域も多くある。阪神大震災で大きな被害を受けたのもこのような木造密集市街地。小規模開発の連鎖。
土地利用の純化
住宅地域に不適切な工場などが建つことによってその地域の環境が悪化する場合などがある。「土地利用の純化」とはその言葉通り一定地域の土地の使用形態(住宅街区、商業街区、業務街区など)を統一させていくことにより街での生活の総合的な向上を目指していくことを指す。一方で用途の複合性そのものも都市の魅力となることから行政と市民の密接な協力の下で地域の特性に応じた適切なまちづくりを目指す必要がある。
財団法人同潤会
1924年、主に関東大震災後の復興を担うために作られた財団法人である。アパートメント建設を中心とした様々な活動を行う。地域そのものを包括的な視点でとらえ集合住宅と公共施設を併設するという、コミュニティを核とした設計姿勢は今なお高く評価すべき点である。また当時最高水準の技術(鉄筋コンクリート構造、電気ガス水道設備の完備など)を積極的に用いたことでも知られている。同時に社会基盤としての住宅という観点から啓蒙的傾向も強く、少なくとも理念のレベルにおいては既存の都市の歴史、文化を前近代的なものとして否定する立場でもあったように思われる。
1920年
第一次世界大戦を契機とする工業化に伴った都市の人口増加、労働者階級や大衆の形成、それらを背景としたデモクラシーの台頭があった。それに伴い、都市の居住環境の悪化などから都市計画に対する関心が市民レベルでも高まり同潤会をはじめとする様々な試行が行われた時代でもある。世界的に見てもヨーロッパ、アメリカで様々な活動が行われ、それは日本にも影響を及ぼしている。
区画整理事業
公共施設が未整備の地域において、土地利権者から少しずつ土地を提供してもらいその土地を道路、公園などに充てる一方で、その土地の一部売却も行い事業資金とする事業制度。公共施設の整備改善と同時に個々の宅地を含めた総合的な整備をすることによって宅地利用の増進を図る。
GENTRIFICATION
60年代から70年代にかけて欧米の都市中心部において失業者の増大、治安の悪化、都市居住環境の劣悪化などの問題が生じ、同時に郊外への人口流出がおこった。ところがその後80年代から90年代にかけて、比較的高所得者の都市への回帰現象が見られるようになった。これをGENTRIFICATIONと呼ぶ。具体的には都市中心部の急激な再開発(居住施設、各種サービス施設などの複合的な大規模開発)によって土地の価値を上昇させた。一方で過度な競合による後輩地域の出現、従来そこに暮らしていた低所得者を無理矢理追い出し新たな問題を抱えることにもなった。
複合開発
商業、業務、住宅など様々な施設を一体に開発、整備すること。
タイポロジー
類型学。形式論。様々なタイポロジー=タイプに分類、比較を行うことを指す。心理学や、言語学など様々な分野で用いられるが、建築都市計画の分野においても歴史的、文化的背景への連続性を支えると共に、必要な変化と自由度が実現される基礎を用意するものであり、その概念は建築や都市空間の形成と展開において大きな役割を果たしてきた。
NPO
従来の行政主導のまちづくりから、行政と市民の協力によっておこなわれるまちづくりが求められるようになってきている。この中で住民を中心としたNPOはその役割を積極的に行っていく住民の代表として期待される存在の一つである。同時にその可能性やパートナーシップの構図も模索されている最中である。地域社会の主体性。市民セクター。
改善型まちづくり
20世紀は人口の増加が増え続けニュータウン建設に代表される開発型まちづくりが様々な場所で行われた時代であった。21世紀に入り、日本でも少子高齢化時代を迎え、従来の人口増加に支えられてきた開発型まちづくりから、既存の都市の改善を中心とした改善型まちづくりへとシフトを迫られている。地域社会の活力を継承し、住まいを改善するために、歴史的に形成されている空間構成を尊重し、多様な住まいの改善手法により小規模な事業や共同立替を連鎖させ、それと連動させて道路や公共施設の整備など住環境の骨格施設の整備を図るまちづくり。
権利変換
権利変換とは、各権利者の持つ各々の従前資産が、その評価額に応じて、新たに建築される施設建築物及びその敷地(従後資産)に関する権利へと等価で交換されることをいう。また、従後資産に権利変換されるほか、各々の権利に相当する金銭補償を受ける場合などもある。アパートの共同建て替えの際の円滑化を図る際などに用いられる。
共同建替え
複数の隣接する土地の権利者が共同して、それらの土地をまとめて新たにアパートメントなどに建て替えること。
江東防災拠点
この江東区は軟弱な地盤や木造家屋と工場の混在密集といった防災上の懸念があった。そのため巨大な防災拠点となるべき団地を作った。この団地には放水銃や棟と棟の間にシャッターなどが設けられており、要は巨大ストラクチャによって防災問題を解決しようとした訳である。ところが膨大な工費と年月、地域のコンテクストを無視した計画など様々な問題も浮き彫りとなった。現在、区は逃げないで住む燃えないまちづくりを目指し住宅の不燃化などを進めている。
近代都市計画
コルビュジェの「輝く都市」に代表される都市計画の機械化と自動化に尺度を合わせた都市計画。交通基盤としての自動車、グリッドの明快な区画、高層ビル群と広々としたオープンスペース、明快なゾーンニング、衛生化。都市の複合性や歴史性ではなく用途の単純さや明快さを求めた。それが機能主義と呼ばれた近代建築家、近代都市計画家のいうところの機能的な都市であった。後に1960年代に入り近代都市計画は様々な批判を受けることとなる。
ゾーンニング
近代都市計画の提唱した基本概念の一つ。都市を異なった単一用途地に分け、これらを機械化された輸送システムで結ぶというもの。都市の秩序という抽象的な理想像。近代建築のゾーンニングの問題点の一つは、都市をある特定の時間帯だけしか活動しない地域に細分化してしまったことにあると言える。都市の多様性を否定したのである。
大規模開発の分節化
小規模な開発によって既存の地域の文脈に埋め込むようなかたちで持続的段階的な開発を行うことができる。また緩やかな変容を誘導することができる。多様な開発主導によるリスクの分散
関東大震災復興計画
52カ所に公園。小学校と近接。有効にまとまった空間を確保できる。公共施設の複合化。日本にはない西洋の広場的なものとしての計画でもある。ほかには旧来の狭い路地の拡張、道路の新設、裏長屋の排除など。同時に下町庶民の生活空間は失われた。このような地域の歴史や既存の空間に対する無関心は、戦後も受け継がれ、技術の一人歩き的な再開発がいたるところで行われることとなる。
現代の都市
地形。旧来、江戸時代の都市計画や区割。震災や戦後の都市の改造。近代初期の政府主導の都市計画から、自立的な変容へ。
衛星都市
大都市の周辺にあって、機能的にはその大都市に従属しながら、形態的には一個の独立した市街地を形成し、かつ、ある程度の自足性を持つような都市。従属関係にある相手の大都市は母都市と呼ばれる。
グリーンベルト
緩衝緑地。大気汚染・騒音・悪臭等から生活環境を守る目的で、発生源と居住地域との間に確保された相当締度の広さを有する緑地。近代都市計画。住宅地域はグリーンベルトで他の地域から隔離されるべきである。
遊動空間
自動車中心の都市計画の中で人間は二の次にされてしまった。自動車のための道路。人間は道路を追われ、細い歩道を歩くしかなくなる。ヴェネチアやドイツなどの自動車進入禁止区域の制定。自由に動き回ることのできる=遊動性の確保。自由に歩き回れて暮らせる暮らし。
城下町の構成原理
周辺の山並み、風景を取り込む景観構成。自然生態学的秩序。風の流れ。土地条件。水路網による多様な利用技術。身分制のゾーンニング。機能に対応した街割り