白石一文の「一瞬の光」を読み直して、あらためて感心。
主人公の生き方に共感する部分がある。
一瞬一瞬を努力して生きて、それでも人間負けるときは負ける。でも潔く負けるのだ。
こういう生き方って流行らないんだろうけれど。白石一文はある種の典型的な日本人男性の
人間性を見事に看破している。でも人間は、一人の人のために
将来も可能性も、すべてを投げ捨てて、生きることが出来るのか。
辛くなったら私のところにくるんだよ。こういう台詞を言える女性も、
この種の男性の欲望を具現化したような感がある。彼らの趣向そのものだ。


一瞬の光って本当に良いタイトルだと思う。彼の3作品読んだ限りではこれが傑作だ。
僕の中では村上春樹ノルウェーの森に匹敵する、純文学のマスターピースのひとつ。


石田衣良の限界は、その時代を読み取る的確な感性は正しいけれど
そういう時代性をただ淡々とトレースするだけではドラマの原作程度にしかなりえないということ。
時代性は、あくまで表層に過ぎないし、それをどんなに深く読み込んだところで
小説が深いものになる訳ではない。
なぜならその時代性がそもそも表層という、うすっぺらな存在でしかないのだから。