安藤忠雄詣り

安藤忠雄近作《兵庫県立美術館》《大阪府立近つ飛鳥博物館》《大阪府立狭山池博物館》《西宮貝類館》《サントリーミュージアム天保山》を見て回った感想。最初に断っておきますけど、安藤忠雄は割と好きです。すごいなあと思うところばかりです。彼の言うところの自然との共生。どちらかというと強力に制御してこその自然。水を使ったりするのが彼の最近の建築言語の一つとなってるけど、なんとなく使うとソフトになるってくらいなんだろうか。コンクリートの硬さが。狭山池はとりわけ象徴的で、あらゆる意味で権威的。無駄も(っていうか安藤忠雄から無駄を取ると安藤忠雄ではないんだけど)多くて、滝のしぶきが手すり+ガラスに飛び跳ねてて汚い。あくまであの手すりは安藤忠雄的に付けたくはなかったんだろうね。もっとうまい処理はできなかったのかな。まあ結構すきなんですけど。


サントリーミュージアム安藤忠雄流のわかりにくい構成が顕著。建築的エンターテイメントパークですね。海岸部分の処理は兵庫県立博物館のほうがうまくなっているので、まあ成長してるなあと。海辺にコンクリートの建物を平然と建てる神経は謎。中性化とか、大丈夫なのかなあ。安藤忠雄のコンクリートは、それはもうすばらしい質なのは知ってるんですけど。あの不親切さは好きじゃないです。過剰にやりすぎてる。《西宮貝類館》はべつにどうってことないです。空間的にはほとんど普通。でもあくまで入り口のガラスでできたチューブが安藤忠雄的で、らしいなあ。《近つ飛鳥》は、またまたすごいことやってますね。はい。《兵庫県立》、、、うーん。海に対してファサードを作りたいのか、訪問者に対してファサードを作りたいのかがわからない。


まともに安藤忠雄の作品をこれだけまとめて短期間に(3日間)観たことはなかったけど、いうなれば単純な形態なんですよ、あたりまえですけど。パッと観たときにそれとなくどんな形なのかっていうのがすごくわかりやすい。近つ飛鳥なら階段って言う風に。全部が見えなくても、全部が俯瞰できたような錯覚を与える。でも内部に入るとすごく複雑な平面、断面をしていてここら辺がコルビュジェの影響をたぶんに受けた部分と言えるけれど分かりにくい。とにかく分かりにくい。このギャップと、そして職人的なコンクリートは空間の純度を高めていて、限られたヴォキャブラリーを極限の表現として昇華させている非常に日本的な要素。さらに無駄な階段とか、そういうのがすごく多い。すごい贅沢な建築です。まず最初に得体の知れない、それでいて単純で形態認識のしやすいヴォリュームが最初にパッとあって、でもそれはその場所まで、苦労しつつたどり着いて初めて理解できる。これは現代建築の一つの特徴だって大学で教わっていたけど、つまりはこういうことなんだなあと思った。でもこういう空間の遊びってすごく大事で、こどもには楽しい空間だと思います。刺激的だし、それでいて安心感がある。安藤忠雄と言う才能と、潤沢な資金があってはじめてできる建築だけれど、まあそれはそれで良いんでしょう。ただ同時にこれは多分専門教育を受けなかったからこその幼稚さとも言える。そういった建築言語を使うって言うことの意味は考えなくちゃいけないと思う。